看板に「整体」と書けない理由|あはき法第7条と2025年2月のガイドラインを条文から整理しました

はじめに|看板の二文字が、療養費と免許の話までつながっていました

こんにちは、矢上真吾です。

合同会社e-lifeの代表をしております。ひとり治療院AI自立化サポートをやっている鍼灸師です。

今日は、私がいま書いている本のテーマそのものを、先にお話ししてしまおうと思います。タイトルは「その看板、法律に通りますか」。

きっかけは、私が法人成りをしたときに、保健所から受けた指摘です。看板に入っていた「整体」という二文字。ここを指摘されました。

先日もこの話は少ししたのですが、今日はもう一段踏み込みます。条文のどこに、どう書いてあるのか。そこまで一緒に見ていきます。同業の先生方に向けた記事です。

1. 保健所で言われたのは「もう十分ご承知でしょうが」でした

ことの発端は、法人成りの手続きです。和からだみなおし処が13年目にして法人成りをしました。そのときに廃業の手続きと、新しく開設の届出をする必要がありました。

一冊のプリントと、ストリートビュー

保健所に行って、書類を出してきたんですね。そこで指摘を受けました。

言い方としては「もうご承知だと思いますけれど」という感じでした。すごく丁寧に、優しく言ってくださったんです。

そして、一冊のプリントをいただきました。いわゆる、あはき・柔整広告ガイドラインです。令和7年に厚生労働省から出たものでした。

さらにそのあと、Googleのストリートビューを見せられました。「整体という文字が入っておりますので」と。

そこまで見ているんですね。つまり、保健所はずっと前から知っていた、ということです。知っていて、言わずにいてくれた。そのタイミングで、ちゃんと教えてくれた。

正直に言うと、ごまかそうと思いました

指摘を受けた瞬間は、ごまかそうと思いました。なんとかならないかな、と思ったんです。

でもそのあと、院の隣の敷地の草刈りをしていたときに、ふと「戻そう」と思いました。鍼灸マッサージに戻そう、と。なぜあのタイミングだったのかは、いまでも不思議です。

もともと開業したときは、鍼灸マッサージとして出していたんです。それを3年目くらいのときに、はりきゅう整体院に変えました。10年やってきた名前を、また戻すことにしました。

看板はいま、業者に発注している段階です。現物はまだ出ているので、「整体」の部分だけを隠しています。歯抜けの看板になっている状態です。

2. なぜ「整体」が引っかかるのか|条文の構造

あはき法第7条は「書いてよいもの」だけを並べた限定列挙の条文

根拠になっている条文から確認します。

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律。いわゆる、あはき法です。その第7条。

「書いてよいものだけ」を並べた条文です

条文はこう始まります。

あん摩業、マツサージ業、指圧業、はり業若しくはきゆう業又はこれらの施術所に関しては、何人も、いかなる方法によるを問わず、左に掲げる事項以外の事項について、広告をしてはならない

ここで大事なのは、後半の書き方です。「左に掲げる事項以外の事項について、広告をしてはならない」。

つまり、書いてはいけないものを並べているのではありません。書いてよいものだけを並べている構造です。リストに載っていないものは、原則として全部だめ、ということになります。

書いてよい5つ

  1. 施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所
  2. 第1条に規定する業務の種類
  3. 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
  4. 施術日又は施術時間
  5. その他厚生労働大臣が指定する事項

そして第2項で釘が刺されています。1号から3号については「その内容は、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたつてはならない」。

告示で決まっている9つ

5番目の「厚生労働大臣が指定する事項」は、平成11年の厚生省告示第69号で9つ決まっています。

  1. もみりようじ
  2. やいと、えつ
  3. 小児鍼
  4. あはき法第9条の2第1項前段の規定による届出をした旨、つまり開設届を出した旨
  5. 医療保険療養費支給申請ができる旨。ただし申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る
  6. 予約に基づく施術の実施
  7. 休日又は夜間における施術の実施
  8. 出張による施術の実施
  9. 駐車設備に関する事項

以上です。全部で、この範囲。

もみりょうじ、やいと。古い言い回しがそのまま残っているところに、この告示の年季が出ています。

このリストのどこにも、整体という言葉は入っていません。だから看板に書けない。理屈としては、それだけの話です。

3. 2025年2月18日、名指しで書かれました

ここまでは以前からの話です。ただ、状況が一つ変わりました。

2025年、令和7年の2月18日。厚生労働省から、あはき・柔整広告ガイドラインが発出されました。

6年かけて、全11回の検討会

これは「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」で議論されてきたものです。第1回が平成30年5月10日。最終回にあたる第11回が令和6年7月12日。

「例、伝統鍼灸、整体 等」

そのガイドラインの中に、こう書かれています。施術者である旨、および業務の種類に関する項目の【広告不可能な事項の例】として、

民間資格を保有している旨。例、伝統鍼灸、整体 等

名指しです。そして、その下にもう一行あります。

英語にしたり、一般的に同じ意味と認識される別の用語・呼称を用いる等表現方法を変えても表示は不可

つまり、整体という言葉を避けて、別の呼び方に置き換えても同じ扱いになるということです。カタカナにしても、英語にしても、独自の名前をつけても。一般に同じ意味だと認識されるなら不可、と書かれています。

これで、以前は各保健所の判断に委ねられていた部分が、国の文書として基準になりました。ガイドラインには「都道府県等において、法や指針に抵触しないか否かを確認するが、判断ができない場合は、都道府県等から厚生労働省に照会を行う」とも書かれています。

4. そもそも「整体」という行為は違法なのか

ここは誤解のないように整理しておきます。

整体という行為そのものが違法だ、という話ではありません。

資格制度があるものと、ないもの

日本の医業類似行為は、法的な資格制度があるものと、ないものに分かれます。

あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう、それに柔道整復。これらは法的な資格制度があります。一方で、整体、カイロプラクティック、気功などは、法的な資格制度がありません。

そして、最高裁の昭和35年1月27日大法廷判決があります。資格制度のない医業類似行為が処罰の対象になるのは、医学的観点から人体に害を及ぼすおそれのある行為に限られる、と整理されています。

だから、資格制度のない手技を業として行うこと自体は、直ちに処罰の対象にはなりません。

問題は「届出をした施術所の看板」です

問題になっているのは、届出をしたあはきの施術所が、その看板に整体と書くことです。

あはき法第7条の広告制限がかかるのは、あん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業、きゅう業、またはこれらの施術所に関する広告です。私たちは届出をして、施術所を構えています。その時点で、看板は第7条の対象になります。

そこに、広告可能事項に入っていない言葉が並んでいる。指摘されるのは、ここです。

5. どこからが「広告」なのか|3つの要件

広告の3要件(誘引性・特定性・認知性)

では、どこからが広告なのか。ガイドラインは3つの要件を示しています。この3つをいずれも満たす場合に広告に該当すると判断されます。

  1. 利用者を施術所等に誘引する意図があること(誘引性
  2. 施術者の氏名又は施術所等の名称が特定可能であること(特定性
  3. 一般人が認知できる状態にあること(認知性

看板は、この3つを全部満たします。だから広告です。

そして条文が「何人も」と書いているとおり、対象は施術者や施術所だけではありません。ガイドラインには、広告代理店やいわゆるインフルエンサー等も広告規制の対象になる、と明記されています。

広告と見なされないもの

  • 学術論文、学術発表等
  • 新聞や雑誌等の記事
  • 利用者等が自ら掲載する体験談、手記等
  • 施術所内で掲示又は配付するパンフレット等
  • 利用者からの申出に応じて送付するパンフレットやEメール等

ウェブサイトは原則対象外。でもリスティングは広告です

ウェブサイトについても触れられています。

インターネット上の施術所のウェブサイトは、その施術所の情報を得ようとする人が、自分でURLを入力したり検索したうえで閲覧するものです。なので認知性を満たさないものとして、引き続き原則として広告とは見なさない、とされています。

ただし、例外が示されています。

  • 検索サイト上で「鍼灸」と検索した際にスポンサーとして表示されるもの
  • 検索サイトの運営会社等に費用を支払うことで、意図的に検索結果の上位に表示される状態にしたもの

こういったバナー広告やリスティング広告。それからSNSでの書き込みも、先ほどの3要件をすべて満たせば広告として扱う、と書かれています。

「これは広告ではありません」と書いても通りません

さらに、こんな例も挙がっています。

「これは広告ではありません」「これは、取材に基づく記事であり、利用者を誘引するものではありません」といった記述があっても、施術所等の名称が記載されているものは、実質的に広告と判断される。

規制を避ける意図で外形的に要件を回避する表現にしても、実質的に要件を満たせば広告として取り扱うのが適当である。これがガイドラインの立場です。

6. 施術所の名称と「診」の字

もう一つ、看板の話をするなら避けて通れないところがあります。施術所の名称です。

ガイドラインは、名称について3つの条件を示しています。

  • 国家資格保有者による、あはき・柔整の業態であること
  • 法令に基づき都道府県に届けられ適法であること
  • 医療機関と紛らわしい名称を用いていないこと

広告可能な名称の例

  • 業態を特定せずに「施術所」「施術院」と表記すること。例、○○施術所、○○施術院
  • 提供する施術業態に「治療院」「治療所」を付けること。例、○○鍼灸治療院、○○鍼灸治療所
  • 施術所が併設されている場合に併記すること。例、○○接骨院・鍼灸院

正直、私はここに気づいていませんでした。○○鍼灸治療院、いいんですね。

広告不可能な名称の例

  • 病院又は診療所と誤解する恐れがあるものを含んでいる名称。例、○○治療所、メディカル、クリニック、リハビリ
  • 対象者を限定するもの。例、女性専門療院、交通事故専門、アスリート
  • 施術内容、技能、方法を含んでいる名称。例、不妊鍼灸、背骨専門、無痛治療、電気療法
  • 効能を含んでいる名称、優良な施術所と思わせる名称。例、姿勢改善、小顔矯正、背骨矯正、巧み

業態を付けずに「治療院」だけにすると病院と紛らわしいので不可。業態を付けて「鍼灸治療院」なら可。そういう線引きになっています。

「診」が入るものは全部だめです

施術日・施術時間の項目に、【広告不可能な事項の例】としてこう書かれています。

  • 診療、診療日、診療時間、診療中と表記すること
  • 診察、診察日、診察時間、診察中と表記すること
  • 休診日、初診、再診、往診と表記すること

「診」が入るものは、医科と紛らわしいので不可。往診ではなく往療、と言い換える形になります。初診も再診も、書けないんですね。

電話番号と開設届の表記

電話番号にも例が挙がっています。技能を暗示する語呂合わせのルビ。たとえば数字に「痛みなし」「みな治る」といった読みを当てるもの。これも不可とされています。

さらに、開設届に関する表記も注意点があります。書けるのは「○月○日 ○○県 開設届出済」まで。厚生労働省認定、都道府県知事認可、指定、といった表記は不可です。あくまで届出であって、認可でも指定でもないからです。

7. 違反したらどうなるのか|指導の4段階と、その先

指導の4段階(任意の調査・行政指導・報告の徴収・告発)と罰金刑のその先

条文上の罰則を並べます。

  • 広告規制違反 ── 30万円以下の罰金
  • 無資格・無届の医業類似行為 ── 50万円以下の罰金
  • 守秘義務違反 ── 50万円以下の罰金。ただし被害者の告訴がある場合に限る親告罪
  • 業務禁止命令違反 ── 50万円以下の罰金

金額だけ見ると、それほど大きな数字ではありません。そして、いきなり罰金になるわけでもありません。

第一段階、任意の調査

違反広告を発見した場合、まず任意の調査として、施術者等に対して説明を求める等の必要な調査を行う。

第二段階、行政指導

広告の中止や広告内容の是正を、訪問・電話・文書等により求める。このとき、目安の是正期間を設ける必要があるとされています。

ここでガイドラインは、指導の定義についてこう書いています。

指導とは、広告の違法性を指摘し、是正に導くことであり、是正案を提示し、時間を経て結果を評価するまでをいう。指示するのみであったり、指導の時点で排除を目的としてはならない。

つまり、直そうという方向で動く限り、そこで終わる話です。

第三段階、報告の徴収

指導の実施後、一定期間を経過しても是正がなされていなければ、報告書の徴収等の措置を講ずる。根拠は、あはき法第10条第1項です。

第四段階、告発

刑事訴訟法第239条第2項の規定により、告発を行うことを検討する。告発が検討されるのは、次の場合と明記されています。

  • 中止若しくは是正の行政指導に従わない場合
  • 違反広告を繰り返す場合
  • 報告の求めに対して報告を怠り、又は虚偽の報告をした場合

裏を返せば、一度指摘を受けて直せば、ここまでは来ないということです。

怖いのは、罰金の「その先」です

罰金刑に至った場合、話は30万円で終わりません。ガイドラインには、こう書かれています。

罰金刑に至った施術者については、受領委任協定又は契約違反となるため、管轄の都道府県、地方厚生局に通知を行うこと

療養費の受領委任の取扱いに、直結します。さらに、

刑事告発等を実施した際には、必要に応じて、事例を公表することにより、利用者や住民等に対して当該違反広告に対する注意喚起を行うこと

事例の公表、という項目もあります。

そしてもう一つ。あはき法は免許の欠格事由として、罰金以上の刑に処せられた者については免許を与えないことができる、と定めています。

看板の文字の話が、療養費と免許の話にまでつながっている。この構造を知っているかどうかが、分かれ目だと思います。

8. 私が本当に伝えたいのは、届出と実態を合わせることです

ここまで広告の話をしてきました。ただ、私が法人成りで実感したのは、もっと手前の話です。

届出の内容と、いまの実態が合っているか。これに尽きます。

私はまさに、そこがずれていました。届出には鍼灸マッサージと書いています。でも看板には整体と入っている。自分がやっていることと、届け出していることが違っていたわけです。

変更届が抜けやすいケース

施術所を開設した者は、開設後10日以内に、開設の場所や業務に従事する施術者の氏名等を、施術所の所在地の都道府県知事に届け出ることになっています。そして、届出内容が変わったときも同じです。

  • 個人から法人に変わったとき。開設者そのものが変わるので、一般には廃止の届出と新たな開設届が必要になります
  • 施術所の名称を変えたとき
  • 移転したとき
  • 業務に従事する施術者が増えたり、辞めたりしたとき
  • 間取りや設備を変えたとき

構造設備の基準

  • 6.6平方メートル以上の専用の施術室を有すること
  • 3.3平方メートル以上の待合室を有すること
  • 施術室は、室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放し得ること。これに代わる適当な換気装置があるときは除く
  • 施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること

そして、常に清潔を保つこと。採光、照明及び換気を十分にすること。

じつは私、ここでもう一つ指摘を受けました。待合室と施術室の間は、独立していないといけません。うちはそこをカーテンで仕切っていたんです。これもだめでした。今後のリフォームのときに、しっかり直していきましょう、と言われています。

届出そのものは受理していただけました。でも、できていないことがまだある。

開設したときは基準を満たしていても、何年か経って棚を増やした、ベッドを足した、待合を狭くした。そういう積み重ねで、届出の図面と実際が食い違っていく。これは十分にあり得ることだと思います。

もう、見えない時代ではありません

Googleの写真を見れば分かってしまう。ホームページもチェックされている。やろうと思えば、いくらでもできる状態です。

だからこそ、言われないからいい、ではないと思いました。私自身ができていなかったので、なおさらそう思います。

もし、鍼灸院として届出を出していて、実際にやっているのが整体なのであれば。届出を外す、という選択肢もあります。鍼灸師の資格は持ったまま、整体業としてやればいいだけです。

大事なのは、届出と実態を一致させることです。

なお、運用には各自治体で幅があります。最終的には、所轄の保健所に確認してください。

まとめ|看板・名称・届出の3点を、いま確認する

  1. あはき法第7条は、書いてよい事項だけを並べる限定列挙の構造。リストにないものは書けない
  2. 2025年2月18日のガイドラインで、広告不可能な事項の例として「整体」が名指しで記載された。言い換えても不可
  3. 広告に該当するかは、誘引性・特定性・認知性の3要件。ウェブサイトは原則対象外だが、リスティングやバナーは広告として扱われる
  4. 施術所の名称にも基準がある。「診」の字は使えない
  5. 罰則は広告規制違反で30万円以下の罰金。ただし手順は、任意の調査、行政指導、報告の徴収、告発の順
  6. 罰金刑に至れば、受領委任の協定・契約違反として都道府県と地方厚生局に通知される
  7. だから、指摘を受ける前に、届出と実態を合わせておく

看板の二文字は、療養費と免許の話までつながっている。指摘される前に、届出と実態を合わせておく。

いま、この内容を一冊にまとめています。タイトルは「その看板、法律に通りますか」。私の5冊目になります。

そして6冊目を、ほぼ同時期に出そうと思っています。こちらは表側です。あん摩マッサージ指圧という仕事そのものを、改めて掘り下げる本にします。

裏で、自分の看板が法律に通っているかを確認する。表で、自分がやっている仕事が何なのかを言葉にする。この2冊がセットになっている、というのがいま考えている形です。

私の恥ずかしい失敗談を、そのままにしないために書きます。参考になれば幸いです。

参照元

  • あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 第7条
  • あはき法第7条第1項第5号の規定に基づく告示(平成11年厚生省告示第69号)
  • あはき・柔整広告ガイドライン(令和7年2月18日、厚生労働省医政局医事課)PDF
  • 最高裁 昭和35年1月27日 大法廷判決

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矢上真吾について

鍼灸師歴24年/合同会社e-life代表/和からだみなおし処 院長/著書4冊。千葉県館山市で鍼灸マッサージ院を13年、その横で「ひとり治療院AI自立化サポート」をやっています。この回のポッドキャスト(Spotify)でも同じ話をしています。

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