
自立の教科書 第2章 / 01 of 03 / 全文無料
売上50万円に到達しない方は、
ここが欠けています
開業1年目、僕の月商は50万円を超えられませんでした。技術でも、集客でもありません。欠けていたのはお金のマインドブロックでした。それが外れた月から、50万円を超えました。
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この章は、教科書の第1章(固定費最適化)のあとに置いています。固定費を見直して、月1万円でも浮かせることができたなら、もうあなたは「変えられる人」です。自分の意思で、今の生活を小さく動かせた。この事実が、ここから話すマインドの入口になります。
そして先に言っておきます。この章でお伝えするのは、精神論ではありません。僕が12年かけて作った「通院指導の型」と、実際の料金の推移を、数字ごと全部出します。
「技術さえあれば食える」は、幻想でした

いきなりキツいことを言います。技術さえあれば食える。これは幻想です。僕自身、この幻想を信じ込んで、痛い目を見ました。

技術があっても、来てくれた患者さんに「また来てください」と言えなければ、売上は積み上がらない。来院数と売上が、まったくリンクしない現実を、開業初月に叩きつけられました。
僕がJリーグを辞めた日
元Jリーグ・ヴァンフォーレ甲府のトレーナーを10年やりました。プロの選手の身体を毎日見て、手技の引き出しも増やしてきた。自分の技術には、それなりに自信がありました。
だから開業するとき、正直こう思っていたんです。
「自分の腕なら、どこでやっても食えるだろう」
これが、最初の勘違いでした。
初月の売上は、6万円でした
2014年1月14日、妻の地元である館山でプレオープンしました。僕自身は、この町に知り合いが一人もいませんでした。
プレオープン初日、緊張しながら待っていました。来てくださったのは、2名。「ありがたい」と「ほっとした」が同時に来た、忘れられない日です。
もちろん、ゼロの日もありました。でも正直な実感を言うと、「思ったより来てくださった」。プレオープンからの約2週間で、延べ19名(うち新規17名)が来院してくださいました。上々のスタート。そう思いました。
ところが、蓋を開けたら、初月の売上は6万円。
プレオープン期の割引メニューとはいえ、痺れる数字でした。「あれだけ来ていただいたのに、この売上?」。人数と売上は、まったく別の指標なんだと、身をもって知った瞬間です。
ちなみに、正式オープンの2月14日は、館山では珍しい大雪で、予約はゼロでした。午後に飛び込みで来てくれた一人の患者さんが、その日のすべてでした。
患者さんは来てくれた。でも売上にならなかった
誤解のないように言います。お客さんが来なかった、という話ではありません。 新規の方は、ちゃんと来てくださっていた。なのに売上は上がらない。理由はたった一つです。
「通院指導」が、できなかった。
目の前の患者さんに「来週、もう一度見させてください」と言えなかった。回数券を案内できなかった。次回の予約を、その場で取れなかった。だから1回きりで終わる方が多かった。
新規がどれだけ来ても、リピートに繋がらなければ、売上は積み上がりません。これは集客の問題ではなく、自分のマインドの問題だったと、後になって気づきました。
来てくれた患者さんは「楽になった」と笑顔で帰ってくれる。技術者としての手応えはある。でも、パソコンに入力する売上の数字は、その手応えとまるで釣り合わない。その小さな違和感が、毎日少しずつ積み重なっていきました。
新患247人。それでも2回目が来なかった
数字で出すと、こうです。
開業1年目の新患は、1年間で247人。月20人以上は来ていただいていました。
田舎で人脈ゼロからのスタートで、この人数です。集客が失敗していたわけではありません。
それでも、2回目がなかなか来ない。 来たとしても1ヶ月後。早くて2週間後。
そんなペースで、良くなるわけがないんですよね。
なぜそんなペースになったか。僕が来院指導をしなかったからです。 そしてなぜできなかったか。お金のマインドブロックでした。
ここが、この章でお伝えしたい一番大事なところです。247人来て売上が立たない院と、同じ247人で売上が立つ院の差は、集客でも技術でもない。施術の最後の一言だけです。
7月に47万円まで伸びて、10月に30万円を切りました

人脈ゼロからのスタートだったので、「とにかく人に会いまくる」作戦で動きました。
サッカー関係者を訪ね歩き、経営者の朝活に参加し、異業種交流会に顔を出し、Facebookでコメントをくれた方にはそのまま会いに行く。スケジュール帳は、治療院の予約ではなく、人と会う約束で埋まっていきました。

その泥臭い努力の結果、2月から7月にかけて売上は右肩上がり。7月には月商47万円に到達しました。「このまま損益分岐点を超えられる」と感じていました。
ところが、8月から売上が下がり始めます。
- 8月「まあ、お盆があったしな」
- 9月「地域で一番大きな祭りの月だからな」
- 10月「……もう言い訳のしようがない」
10月、月商が30万円を切りました。
そして、通帳の残高が100万円を切ったことに気づいたとき、震える手で父親に電話をかけました。父のアドバイスで支出を削減し、なんとか出血は止めた。でも売上が上向く気配はない。そのまま1ヶ月が過ぎました。
先輩が、無言で回数券を買っていった
その厳しかった10月のことです。
いよいよ経営が厳しくなってきて、JC(青年会議所)も辞めようかと思っていた時期でした。そんなとき、知り合いの先輩が施術を受けに来てくれていたんですが、ある日の施術後——
先輩は何も言わず、回数券をポンと買っていかれました。
無言で。「頑張れ」とも「応援してるよ」とも言われなかった。ただ、回数券を買って帰っていった。
その背中を見て、なんとも言えない気持ちになりました。言葉にされるより重い応援でした。
11月16日、兄の一言

11月16日の日曜日。突然、兄から電話がありました。「海が見たいから、今からそっちに行くわ」。
その夜、夕飯を食べながら経営の話になりました。僕はひとしきり言い訳を並べました。

- 「経営経験が少ないからさ」
- 「やっぱり田舎は市場が小さいんだよ」
- 「ちゃんとセルフケアを教えてるから、みんなすぐ良くなっちゃうんだよ」
- 「不況だから仕方ないよ」
一通り聞き終えた兄は、静かにまっすぐ僕の目を見て、こう言いました。
「お前さ、患者さんに『通ってください』って言ってる?」
たった一言。でも、何も言い返せませんでした。図星でした。
兄は続けました。
「治療家は、患者さんを治すのが仕事だろ。本当に治すためには、継続した治療が必要なんだよ。だから、患者さんは通った方が良くなるに決まってる」
その言葉で、ようやく気づきました。「通ってください」は、お金のための言葉じゃない。患者さんの身体を本当に良くするための、治療家としての責任ある提案なのだと。
変えるべきマインドは、ただ一つ

マインドの話は、あれこれ散らかりがちです。でも、僕がこの12年で骨身にしみたのは、たった一つでした。
「お金をもらうのが怖い」というブロックを外すこと。
これ一つです。他のこと(経営感覚、数字の読み方、仕組み化、集客)は、全部この後の章で扱う「技術」の話。マインドは、ただこれ一点。ここが外れるかどうかで、人生が変わります。
これは、僕だけの話ではありませんでした
もし僕一人の体験談なら、ここまで断言しません。
経営セミナーや研修会で、ほかの一人治療家の先生方と話す機会が増えてから、はっきり分かったことがあります。
月商50万円に届かない先生方の多くが、僕と同じ「お金のマインドブロック」を持っているんです。
技術が足りない、集客が足りない、という話ではありませんでした。お金に対して、卑しいような、申し訳ないような気持ちが自分の中にある。 それが、患者さんに「通ってください」を言わせない壁になっている。
技術の高い先生ほど、この傾向が強いように見えます。真面目に技術を磨いてきた方は、「技術で応えるべきで、お金の話を持ち出すのは筋が違う」と考えやすいからだと思います。
だから、この章は精神論の話ではなく、月商50万円の壁の正体そのものとして書いています。
なぜ怖かったのか
Jリーグ時代は、選手から直接お金をもらう機会がなかったんです。契約はチームと僕の間だけ。選手は言わなくても勝手にケアを受けに来る。10年間、目の前の人から「ありがとう」の対価としてお金を受け取る経験が、ほぼありませんでした。
その経験しかなかった僕は、「患者さんに通ってくださいと言うのは、お金のためにやっている卑しいことだ」と、無意識に感じていたのです。
これが、経営者としての僕の頭を縛り付けていた「お金のブロック」でした。
「大丈夫ですよ」と言ってしまった話
開業1年目。肩が痛くて通ってくださっていた患者さんに、本当は「来週もう一度見させてください」と言うべき場面でした。でも、僕の口から出たのは。
「大丈夫ですよ。また何かあったら、来てくださいね」
自分でもびっくりしました。通院提案ですらない、丁寧なお見送り。お金をもらうことが申し訳なくて、その患者さんの回復を、自分から遠ざけてしまった。今思うと、あれは「患者さんのため」ではなく、「自分の罪悪感を軽くするため」の発言でした。
そして、いま思い返すと、もっと恥ずかしいことをしていました。
患者さんのほうが、「来た方がいいですよね?」と、ずっとおっしゃっていたんです。
そのときの僕はどう答えていたか。
「いや、セルフケアをやれば大丈夫ですよ」
患者さんが自分から扉を開けてくれているのに、僕がその扉を閉めていた。お金をもらうのが怖かったからです。
セルフケアの指導そのものは、もちろん大事です。いまでもやっています。でもあのときの僕は、セルフケアを「通院指導をしないための逃げ道」として使っていました。 ここは、はっきり区別しないといけないところです。
回数券は、最初からありました
ここも正直に書きます。回数券は、開業当初から用意していました。父も治療院をやっていて、回数券を使っていたので、ネガティブなイメージは特になかったんです。
でも、作ってあるのに勧められませんでした。
「回数券を勧める=お金をお願いしている」みたいな感覚があって、どうしても一歩踏み出せなかった。回数券は受付に置いてある。でも自分からは案内しない。聞かれたら説明する。そんな消極的な状態がしばらく続いていました。
つまり僕の問題は、回数券という道具を持っていなかったことではなく、それを出す一言が言えなかったことでした。道具はあったんです。
言えない理由は、3つに整理できます
あれから12年。同じような悩みを抱える治療家の方と話してきた経験から、言えない理由は大きく3つに整理できます。
① 「お金のため」に見られたくない
一番多いのがこれです。でも、患者さんの立場からすれば、プロに「通った方がいい」と言われることは、むしろ安心感につながります。言わないことの方が、プロとして無責任です。
② 「断られたら怖い」
断られることへの恐怖が、言葉を止めます。ただ、実際に言ってみると、断る患者さんはほとんどいません。「今は難しいけど、できるときに来ます」という方がいたとしても、それはその方の事情であって、あなたの提案が間違っていたわけではありません。
③ 「自分の技術に自信がない」
「本当に通う価値があるのか」と自信が持てないと、言葉に力が入りません。「この患者さんは通った方が良くなる」という確信さえあれば、言葉は自然と出てきます。
3つの理由への、それぞれの答え
言えない理由が3つあると書きました。僕が実際にどう乗り越えたかを、理由ごとに書いておきます。
①「お金のため」に見られたくない への答え
検査を先にやってください。 検査をして、状態を共有してから頻度を伝えると、その提案は「検査の結論」になります。検査をせずに頻度だけ言うと、たしかに営業に聞こえます。
つまりこれは、マインドの問題であると同時に手順の問題でもあります。手順を変えると、罪悪感がかなり減ります。僕がいま「断られる要素がほとんどない」と言えるのも、結局この手順のおかげです。
②「断られたら怖い」への答え
断られる前提で言ってください。 断られたら、それはその方の事情です。あなたの提案が間違っていたわけではありません。
そして、実際に言ってみると分かりますが、断る方はほとんどいません。僕は12年でほとんど断られていません。怖さの見積もりが、現実より何倍も大きいだけです。
③「自分の技術に自信がない」への答え
これは、通院指導をしないと永遠に解決しません。順番が逆なんです。
通ってもらって、良くなるのを見て、はじめて自信がつきます。 自信がついてから提案しようとすると、提案する機会が来ないので、自信もつきません。
僕は1年目、この循環の外側にいました。兄の一言で、無理やり中に入れられた形です。
今も、続くチャレンジ
このマインドは、12年経った今も、時々顔を出します。たとえば新しいメニューを作るとき、値段を決めるのに毎回悩みます。「これだけもらって、釣り合うだろうか」。
そう思うたびに、自分に言い聞かせます。
「価値を正当に受け取らないと、本当に困っている人に続けて提供できない。」
これは、矯正し続けているマインドです。
もう一つの壁は、頻度が分からなかったこと

お金のブロックが一番の理由。これは間違いありません。でも振り返ると、もう一つ大きな理由がありました。「どれくらいの頻度で来てもらえばいいか、分からなかった」ことです。
Jリーグ時代は「毎日」が当たり前だった
僕はJリーグで10年、選手の身体を毎日見ていました。練習前・練習後・試合前・試合後。選手は来てくれるし、僕は毎日状態を把握できる。「今日は右太もものハリが強い」「昨日より可動域が出てきた」と、改善をリアルタイムで感じられる環境でした。
毎日ケアできる。毎日施術できる。これが僕の中の「普通」でした。
ところが、治療院で一般の患者さんを診るようになって、突然分からなくなりました。
一般の患者さんに「毎日来てください」は、費用的にも時間的にも非現実的です。じゃあ週何回? 月何回? 正直、分かりませんでした。「適切な頻度」の目安が、自分の中にありませんでした。
「責任が持てない」という、言葉にできない不安
確信が持てないまま「週1回来てください」と言うのは、なんだか無責任な気がしました。
「効果が出るかどうか分からないのに、お金を払わせていいのか」
この感覚が、「通ってください」という言葉を飲み込ませていた、もう一つの理由でした。断られることへの恐怖というより、自分自身への不信感だったんだと思います。
兄の二つ目の一言「週に1回通ってくださいと言いなさい」
11月16日の夜、兄は続けてこう言いました。
「定期的な施術が必要なので、週に1回通ってくださいと言いなさい」
シンプルすぎる答えでした。でも、それが正しかった。
頻度の正解が分からなくても、まず「週に1回」と伝える。当時の僕にとって、この一言が救いになりました。
兄に「一言一句変えるな」と渡された文面
そのとき、兄はもう一つ、厳しいことを言いました。
「通ってくださいと言えないのは、責任放棄だぞ」
「良くなりたいがために患者さんは来ているんだ。それを、良くなる術を知っているプロの施術家がしないっていうのは、職業放棄と変わらない」
言い返せませんでした。でも正直、自分ではどうしたらいいのか分からなかったんです。「通ってください」と、どう言えばいいのか。言葉が出てこない。
兄が言ったのは、こうでした。
「明日から全ての患者さんに、この言葉を一言一句間違わず言いなさい」
渡された文面は、これです。
「良くなるには継続した治療が必要です。今から1週間に1回来るようにしてください。」
たった2文です。アレンジもしません。一言一句そのまま、全員に言う。そう決めて、翌日からやりました。
この文面が、なぜ効くのか
いま12年やった立場から解説させてください。この2文、よくできています。
1文目「良くなるには継続した治療が必要です」 … 主語が「良くなるには」です。お金の話でも、こちらの都合の話でもなく、患者さんの目的の話から始まっています。 だから言いやすい。

2文目「今から1週間に1回来るようにしてください」 … 「来ていただけますか?」ではなく、「してください」で言い切っています。 お伺いではなく、プロとしての提案です。そして「今から」と時期が、「1週間に1回」と頻度が、両方入っています。
僕が自分で考えた言葉だと、必ずここに「もしよろしければ」とか「お時間があるときに」が混ざってしまう。それが入ると、患者さんは「行かなくてもいいのかな」と受け取ります。
だから、自分で考えないほうがいい。 最初は借り物の文面を、一言一句そのまま使ってください。
翌日、最初の患者さんが喜んだ
翌朝、治療院のドアを開けるのが少し怖かった。ちゃんと言えるだろうか。
最初の患者さんの施術が終わり、お見送りのときが来ました。心臓が口から飛び出しそうになりながら、こう切り出しました。
「あの……身体を本気で良くするためには、継続した治療が必要です。なので、週に一回、通ってください」
すると、その患者さんは、ぱあっと顔を明るくして言いました。
「そうですよね! 分かりました! 回数券、買います!」
喜んで……る?
頭をガツンと殴られたような衝撃でした。僕が「卑しいことだ」と思い込んでいた提案は、患者さんにとっては「プロからの、責任ある提案」として、すんなり受け入れられるものだったのです。
別の患者さんは、こうおっしゃいました。
「そうですよね、1回で良くなるわけないですよね。回数券、買ってきます」
僕があんなにためらっていた行為を、患者さんは待っていたんです。
その日から、来た患者さん全員に伝え続けました。数字はこう動きました。
| 月 | 売上 | |
|---|---|---|
| 10月 | 296,000円 | 通帳の残高が100万円を切った月 |
| 11月 | 341,000円 | 16日に兄の一言。4ヶ月ぶりに前月を上回った |
| 12月 | 569,000円 | 全員に伝え続けた最初の丸1ヶ月 |
11月から12月で1.7倍。10月と比べると1.9倍です。経営危機を脱しました。
人は、忘れる生き物です
なぜ通院指導が必要なのか。もう一歩踏み込んで書きます。
僕は当時、こう考えていました。「セルフケアを教えておけば、あとは自分でやってくれるだろう」。
でも、そうならないんです。人は忘れる生き物だからです。
生活のリズムを変えたり、習慣を変えたり、やるべきことをやっていけば、良くなることはあるかもしれない。でも、なかなかそれはできません。何が正しいかが、患者さんには分からないからです。 そして、忘れてしまう。
それを支えるのが、僕たちの仕事です。僕はそれを放棄していました。
だから「通ってください」は、お願いではありません。忘れる生き物である人間を、忘れないうちに次に繋ぐ仕組みです。そう捉え直したときに、僕はやっと言えるようになりました。
数字は、こう動きました
この一言を言い始めて、実際に何が起きたか。数字だけ並べます。
11月 341,000円 → 12月 569,000円(1.7倍)
翌年の売上:1年目の倍以上
やったことは、兄に渡された2文を全員に言っただけです。新しい技術は覚えていません。広告も打っていません。ホームページも触っていません。
言葉を一つ変えただけで、1.7倍。
「もう言わない方が失礼だ」に変わるまで
ただし、最初から気持ちよく言えたわけではありません。最初は苦しかったです。
それが、患者さんが喜ぶ経験のすり込みになっていきました。そして継続によって患者さんが目に見えて良くなることを、自分の目で確かめられた。
徐々に、徐々に、マインドが変わっていきました。
そして最後に、こういうところまで来ました。
「もう、言わない方が失礼だ」
ここまで来ると、もう戻りません。いま僕が「断られることはほとんどない」と言えるのは、話術を身につけたからではなく、この地点に立っているからです。
分からないなら、まず週1回でいい
頻度の最適解は、症状によって全然違います。でも、最適解を考え込むより、まず「週に1回」で統一するほうが、圧倒的に前に進みます。
この一言が自分の中にあると、施術の終わりに迷わなくなります。

僕はそこから始めて、3年目のときに、状態によっては週2回を提案するようになりました。
「提案」だけど、はっきり伝える
頻度は、いまも「提案」として伝えています。
ただ、はっきり伝えます。そう言わないと、なかなか良い方向に持っていけないからです。これは、開業当初からいまも変わっていません。
「改善している」が見えたとき、確信が生まれた
週1回通っていただくうちに、患者さんが実際に良くなっていく。
その積み重ねが、確信に変わりました。
「週1回来てもらえば、この方は良くなる」
この確信さえあれば、「通ってください」という言葉は自然と力を持ちます。逆に言えば、確信がないまま言っても患者さんには伝わらない。言葉の力は、確信に比例します。
【いまの形】12年かけて、決め打ちはこう育ちました

ここまでが、開業から2年目までの話です。ここからは、12年やった今、僕の院で実際に回している型をお見せします。
最初の「全員に週1回」は、捨てていません。育ちました。
いまは、初回の評価で頻度を分けています
まず、初回で評価をするときに、状態によって通院指導を変えています。
- 状態が良くない方 … 最初から週2回以上を提案します
- そこまで酷くないなと判断した方 … 週1回で提案することもあります
開業当初の「全員に週1回」から変わったのは、この一点です。評価して、分ける。 ここができるようになるまでに、僕は数百人の患者さんを診ました。
だから、もしあなたが今「分けられない」なら、それは当たり前です。分けられないうちは、決め打ちでいい。 分けるための材料は、決め打ちで診た人数の中に溜まっていきます。
8回目で、必ず検査をします
そして、ここが一番お伝えしたい部分です。
僕の院では、だいたいの患者さんが回数券を購入されます。 その回数券は8回券です。
だから、回数券の8回目のときに、検査をします。 そこでもう一度状態を測って、頻度の修正をします。
これが、いまの僕の型です。
初回の評価で頻度を決める → 8回通ってもらう → 8回目で測り直して、頻度を修正する
開業当初と違うのは、頻度を見直すタイミングを、感覚ではなく「8回目」という固定の点で決めていることです。8回目の検査のあとの頻度は、そのときの状態で決めています。
なぜ「8回」なのか
これは偶然ではありません。回数券の設計から来ています。
開業当初の回数券は、39,000円の10回券(1回あたり3,900円)でした。 それを2015年に8回券へ変えました。このとき「8回」という区切りが、僕の院の標準になりました。

区切りが8回だと、週1回の方はちょうど2ヶ月で戻ってきます。週2回の方なら1ヶ月です。「そろそろ測り直したほうがいいな」と思う時期と、回数券が終わる時期が、だいたい重なる。 これが回しやすさの理由です。
あなたの院の回数券が10回なら、10回目で測ればいい。数字そのものより、「回数券の終わりを、検査のタイミングとして使う」という設計が大事です。
断られることは、ほとんどありません
正直に書きます。いま、通院指導を断られることはほとんどありません。
自信があるから、という話ではないです。理由はもっと単純で、状態をこちらが確認して、それに必要なことを伝えているからです。
検査をして、いまどういう状態かを共有して、そこから必要な頻度を伝える。この順番を踏んでいれば、断られる要素がほとんどないんです。
逆に言うと、開業1年目の僕が断られるのを怖がっていたのは、検査と共有を飛ばして、頻度だけを言おうとしていたからです。根拠のない提案は断られます。根拠のある提案は、ほとんど断られません。
ただし、こういう傾向はあります
きれいな話だけでは終わらせません。ひとつ、はっきりした傾向があります。
回数券を買わない方は、通わない方が多いです。
これは、僕の院の12年の実感です。回数券は割引のためのチケットではなく、「通う」という意思決定そのものなんだと思っています。その意思決定をしていない方は、次の予約が入っていても、途中で来なくなることが多い。
だからこそ、回数券を「お得ですよ」で売ってはいけない。治療計画とセットで出す必要があります。後でその条件を書きます。
受付が、ペースを伝えてくれています
もうひとつ、いまの形として大事なことがあります。僕一人で回しているわけではありません。
受付が、患者さんにペースを伝えてくれています。 そして、回数券を買うとまとめ予約ができるので、予定が分かる方には、その場で全部入れてもらうようにしています。
ここは、一人治療院の方にぜひ真似していただきたい部分です。「週1回、8回」と決まったなら、その8回分の予約を、その日に全部押さえる。 患者さんは「次いつ行こう」と考えなくてよくなる。こちらは先の予約が見える。両方が楽になります。
受付がいない院でも、これは同じです。会計のときに手帳を出してもらって、8回分を一緒に書き込む。それだけで、離脱は確実に減ります。
リピートは「施術前」に決まっています

3年目に、もう一つ大きな転機がありました。
きっかけは、治療院支援協会の「2ミリオンクラブ」というプログラムで学んだ教えです。そこで教わったのが、この4つのステップでした。

問診 → 検査 → カウンセリング → 施術
- 問診 … しっかりと身体の状態を聞く
- 検査 … こちらで状態を把握し、評価する
- カウンセリング … どんな状態で、改善するにはどれくらいの頻度で、どれくらいの期間が必要かを伝える。「よろしければ、このまま進めていきます」
- 施術 … そして施術に入る
この流れを知ったとき、衝撃を受けました。
回数券を購入するかどうか——つまりリピートするかどうかは、施術前に決まっている。
しっかり問診して、検査して、カウンセリングで誠実に状態と治療計画を伝える。この流れの中で、患者さんは「この先生に任せよう」と決めているんです。
施術後に何を言うかではなく、施術前の流れをどう作るか。 ここにリピート率の鍵がありました。
正直に言うと、兄の一言のあとの2年目時点では、リピート率が何%だったか数字では分かりません。リピート率という概念自体を、まだ知らなかったからです。 おそらく50%もいっていなかったと思います。それでも「通ってください」と明言するようになっただけで、確実に何かが変わり始めていました。
そして3年目、この4つの流れを実践し始めてから、リピート率は大きく上がっていきました。
僕のリピート率が変わった転機は、2回だけ
振り返ると、たった2回です。
- 明言したこと … 「良くなるには継続した治療が必要です。今から1週間に1回来るようにしてください」と言えるようになった(兄の一言)
- 仕組みにしたこと … 問診→検査→カウンセリング→施術の流れを作った(3年目)
どちらにも共通しているのは、誠実に、患者さんに伝えるべきことを伝えたということだけです。
リピート率を上げるテクニックがあるわけではありません。身体がつらくて来ている患者さんに対して、「どうすればよくなるか」を伝えないほうが、よほど不誠実です。
売上の公式を知った日

もうひとつ、マインドが動いた瞬間があります。2年目の大晦日です。
そのころ、月商は89万円まで伸びていました。人脈ゼロからのスタートだったことを思えば、本当に嬉しい数字でした。予約率も高く、患者さんとの関係も温まっていた。
でも、そこから先に進めない。何度チャレンジしても、90万円の壁が越えられない。
「この町の規模的な限界なのかな」。いつしか、そう思うようになっていました。
実家で家族と年越しを過ごす中、また経営の話になりました。僕が言い訳を並べたあと、兄は静かに言いました。
「お前は、根本的に売上の仕組みが分かっていない」
そしてシンプルな公式を教えてくれました。
売上 = カルテ枚数 × 単価 × 来院頻度
「お前が今できているのは、カルテ枚数を増やすことだけだ。売上を上げる方法は、あと二つある。単価も頻度も、まだまだだ」
目から鱗が落ちました。シンプルすぎる。なのに、なぜ今まで気づかなかったのか。
「世の経営者は、こうやって数字を分解して考えているのか」。その瞬間、僕の頭の中に初めて「経営の地図」が広がった感覚がありました。
3本のレバー
この公式には、売上を動かす3本のレバーが入っています。それぞれ独立して動かせます。
| レバー | 中身 | 動かし方 |
|---|---|---|
| カルテ枚数 | 新規患者数 | 集客・紹介・SNS・チラシ。最も分かりやすいが、一人治療院では上限がある |
| 単価 | 1回あたりの施術料金 | 技術・価値の見せ方・メニュー構成。場所に関係なく上げられる |
| 来院頻度 | 1人が月に何回来るか | 提案の仕方一つで変わる。最も見落とされている |

3つのうち、どれか一つを2倍にすれば売上は2倍になる。全部を1.3倍ずつ改善すれば、2.2倍になる。
僕が2年間、動かしていなかったレバー
兄の話を聞いて、すぐに気づきました。
僕が2年間やり続けていたのは、「カルテ枚数を増やすこと」だけだった。人に会い、頭を下げ、サッカーのコミュニティに入り、新規患者を増やす努力を積み重ねてきた。
でも「単価」と「来院頻度」には、ほとんど手をつけていなかった。
なぜ触らなかったのか。単価を上げることへの罪悪感。「週2回来てください」と言えない恐怖。 どちらもマインドセットの問題でした。やり方ではなく、考え方が変わっていなかった。
そして、ここが一番大事なところです。
僕は「田舎だから売上が上がらない」と思っていました。でも、田舎が影響するのはカルテ枚数(新規患者の数)だけです。単価と来院頻度は、場所とは関係ありません。 今いる患者さんとの関係の中で、いくらでも動かせます。
僕がずっと「田舎の限界」と呼んでいたのは、実はレバーを一本しか触っていなかった自分の問題でした。
地図を手に入れた3年目
公式を知った僕は、3年目の年明けに改革を一度に断行しました。
週休2日・8時間労働に縮小しながら、施術を30分に短縮し、週2回の来院を提案する。単価と頻度を同時に動かす挑戦でした。
結果、改革初月の月商は110万円。 2年間越えられなかった89万円の壁が、翌月にあっさり突破されました。
しかも、労働時間を減らした状態でこの数字が出ています。
「地図」があれば、闇雲に走らなくていい。どのレバーを、どれだけ動かすかを考えながら動ける。その違いは、想像以上に大きかったです。
値上げの話を、記録ごと全部出します

さて、単価の話です。ここは実数を出します。
先に結論を言うと、値上げそのものは、いま振り返るとそんなに怖くありませんでした。 怖かったのは値段ではなく、「通ってください」と言うことでした。この2つは、僕の中ではまったく別の恐怖です。
そして記録を見ると、それを裏づける形になっています。2回の値上げは、どちらも開業3年以内に終わっているんです。
実際の推移
| 時期 | 施術料 | 回数券 | きっかけ |
|---|---|---|---|
| 2014年(開業時) | 4,400円 | 39,000円(10回券・1回3,900円) | — |
| 2015年(2年目) | 5,500円 | 40,000円(8回券・1回5,000円) | 自分で「ちょっと安すぎたな」と判断 |
| 2016年(3年目) | 6,600円 | 44,000円(8回券・1回5,500円) | 治療院支援協会での学び |
| 現在 | 6,600円 | 44,000円 | 10年間、据え置き |
この表の一番下、そこを見てください。2016年から10年間、僕は施術料を変えていません。
1回目の値上げは、自分の判断でした
最初の値上げは2015年。自分で「ちょっと安すぎたな」と思っての決断でした。誰かに言われたわけではありません。
このとき、回数券も10回から8回に変えています。単価が上がり、区切りが8回になった。いまの「8回目で検査」の型は、ここから始まっています。

値上げした状態で1年間やってみました。予約率は80%を超え、毎日精一杯施術をしていました。でも、売上は89万円止まり。100万円には届かなかった。
「こんなもんかな」——正直、そう思っていました。
そしてその年の大晦日に、兄から売上の公式を教わります。予約率はもう80%を超えている。これ以上、回数を増やすのは難しい。だとしたら、変えるべきは「単価」だったんです。
2回目の値上げを決めた、一つの言葉
兄が教えてくれたのが「治療院支援協会」の存在でした。月額1万円で、月に1回動画が更新される。その動画で経営の原理原則を学ぶという形式です。
学ぶうちに、翌年4月から「2ミリオンクラブ」というプログラムが始まることを知り、申し込みました。
そこで言われた言葉が、今でも心に残っています。
「先生方の技術って、そんなに安いものでしょうか。まず3年間専門学校に行って、それからもずっと臨床を続けてきた。その技術は、そんなに安いものではないと思います」
この言葉で、覚悟が決まりました。
恐怖の中身は、全部「かもしれない」でした
値上げを前に何を考えたか、分解して書いておきます。
- 「今の患者さんが離れるかもしれない」
- 「高いと思われて、新規が来なくなるかもしれない」
- 「近くに安い治療院があるから、そっちに行くかもしれない」
全部「かもしれない」なんですよね。 実際に起きたことではなく、自分の頭の中だけの話でした。
冷静に考えてみると、自分が本当に大切にしたい患者さんは、500円や1,000円の差で来なくなるような方ではありませんでした。
そして、これは書いておきたいことですが——「安さ」で選ばれた患者さんは、「もっと安い場所」が見つかれば、そちらに行きます。 これは値段の問題ではなく、信頼関係の問題です。
実際にやった手順は、2つだけ
① 既存の患者さんには、2ヶ月前に告知
今通院している患者さんには「2ヶ月後に値上げします」と直接伝えました。突然の変更は不信感につながります。時間をかけて丁寧に伝えることが大切でした。
② 新規の方は、その日から新料金
新しく来る方には、告知した日から新料金を適用しました。既存の方への配慮と、新規への切り替えを分けることで、スムーズに移行できました。
実際に起きたこと
正直、値上げした月は緊張しました。予約が減るかもしれない。クレームが来るかもしれない。
やはり来なくなった方は、一定数いました。 正確な割合は覚えていませんが、ゼロではなかった。ここは正直に書きます。
でも、想像していたよりもずっと多くの方が残ってくれました。「先生の技術なら当然ですよ」「もっと早く上げてよかったのに」——そう言ってくださる方もいました。
そして数字は、こう動きました。
実売上 89万円 → 124万円(回数券購入分を含めると135万円)
同じ施術数でも、単価が上がったことで売上が大きく変わりました。約40%のアップです。
10年据え置いている理由
ここで、あえて逆のことも書きます。
僕は2016年以降、10年間値上げをしていません。 「単価は場所に関係なく上げられる」と書いた僕が、10年動かしていない。
これは怠慢ではなく、いまの価格で、僕が幸せに回せているからです。次の章(自分が一番幸せになれる収入を、自分で決める)で詳しく書きますが、僕は一度「月商200万円」を目標にして、そこで苦しくなった経験があります。
値上げは手段です。目的ではありません。 上げるべきときに上げられる状態を作っておくこと、それが大事で、常に上げ続けることが正しいわけではない。ここは誤解しないでいただきたいところです。
10人目・50人目・100人目で、何が変わるか

通院指導を決め打ちで始めると、自分のマインドはこんな段階で変わっていきます。
1人目〜10人目:声が震える
最初は本当に怖いです。「来週、もう一度見させてください」と言うだけなのに、声が震える。患者さんの目を見て言えない。断られたら、「やっぱりダメだ……」と落ち込む。このフェーズは、僕も全員通る道だと思っています。
11人目〜50人目:徐々に言えるようになる
10人ほど続けると、何かが変わります。通って良くなった患者さんが「あのとき、続けてよかった」と言ってくれる経験が積み上がります。「ちゃんと提案してよかった」という納得感が、自分の中に少しずつ蓄積していきます。
それでも、言うときの「申し訳なさ」はまだ残っています。
51人目〜100人目:自然に出るようになる
50人を超えてくると、通院指導が自然な施術の一部になります。「次回は1週間後に」と、無意識に言えるようになる。患者さんのほうも「先生がそう言うなら」と素直に受け止めてくれることが増えます。
このフェーズで、ようやく「お金をもらうのが申し訳ない」という気持ちが薄れます。
100人目以降:自分のフォーマットが育つ
100人を超える頃には、自分なりの判断基準が育ちます。「この状態なら最初から週2回以上」「この方は週1回でいい」という分岐ができてくる。僕がいまやっている「初回評価で分ける」は、この延長線上にあります。
ここまで来ると、もう「指導するか迷う」段階は卒業しています。
頻度は、体の状態の「段階」で伝えています
「来週、もう一度見させてください」だけだと、患者さんも不安になります。いまの僕は、体の状態を4つの段階に分けて(4ステージ理論)、その段階に合った頻度を伝えています。
- ステージ1 … 誰が見てもつらい状態。最低でも週2回(「週2回がミニマム」という言い方をしています)
- ステージ2 … 仕事も生活もできているけれど、症状が常にある。週1〜2回
- ステージ3 … 日常生活は問題ないけれど、無理ができない・スポーツができない。週1回、もしくは2週に1回
- ステージ4 … 無理も効く・スポーツを楽しめる。頻度は自由

ステージ3で通うのをやめてしまう方が多いのですが、そうするとぶり返します。体の機能が、まだ戻っていないからです。
この段階の伝え方は、『施術の仕組み化の教科書』に詳しく書いています。
初回の流れを、通しで書いておきます
バラバラのフレーズだと使いづらいので、初回の流れに並べ直します。前に書いた4ステップの中で、どこで何を言うかです。
① 問診
身体の状態をしっかり聞きます。ここではまだ、頻度の話も料金の話もしません。
② 検査
こちらで状態を把握して、評価します。可動域でも、圧痛でも、姿勢でも構いません。大事なのは「次回、同じ検査ができる」ものを選ぶことです。これが8回目の測り直しで効いてきます。
③ 評価と説明(ここで頻度を伝える)
検査の結果を共有して、いまの体の段階と、そこから必要な頻度を伝えます。そのうえで施術の方法も話し、質問がないかを確かめてから施術に移ります。
回数券のご案内は、ここではしません。初回の施術が終わったあと、会計のときです。
④ 施術
そして施術に入ります。
施術の後に頑張って説得する必要は、ありません。 リピートは③で決まっています。会計のときは、③で伝えた頻度に合わせて、回数券と次回の予約をご案内するだけです。
受付がいない院では、どうするか
うちは受付がペースを伝えてくれますが、一人で回している方も多いと思います。その場合はこうしてください。
会計のときに、手帳かスマホを出してもらう。 そして、「では来週の同じ時間で」と、その場で次を入れます。8回分の予定が分かる方なら、8回とも入れてしまいます。
「あとで電話します」で帰られた方は、電話が来ないことのほうが多いです。次の予約は、その場でしか取れません。
やってはいけない3つ

回数券を最初から強く勧めすぎる。 状態も伝えないうちに「うちは回数券がお得です」と言うと、「営業された」と感じられます。回数券の話は、状態と頻度を共有して、施術を受けていただいたあとの会計のときに出すものです。
「もっと頻繁に来ないと治らない」と煽る。 不安を煽る伝え方は、その場では予約が取れても、長期的には信頼を失います。「治らない」ではなく「こうすると、もっと早く戻ります」と伝えてください。

全員に同じ頻度を機械的に勧め続ける。 決め打ちで始めるのは正解ですが、慣れてきたら状態に合わせて分ける引き出しを増やしてください。僕自身、「全員に週1回」から「状態によって週2回を提案する」ようになったのは、3年目のときです。
回数券が「安心のチケット」になる条件

回数券がただの割引チケットになるか、患者さんの「安心のチケット」になるかは、出し方次第です。
① 治療計画とセットで提案する

「回数券いかがですか?」ではなく、評価と説明で伝えた体の状態と頻度に合わせて、回数券をご案内する。和からだの回数券は8回で、その8回目が再検査の区切りです。
これができていると、回数券は「計画を実行するためのツール」になります。患者さんにとっても、区切りが見えるから安心する。「いつまで通えばいいか分からない」という不安がなくなります。
② 「通ってください」と言い切る
遠慮は不要です。患者さんの身体を良くするために必要なことを、自信を持って伝える。曖昧な提案は、患者さんを迷わせるだけです。
③ 有効期限を適切に設定する
僕は最初、有効期限を設定していませんでした。2016年に3ヶ月に設定しました。ある程度の期限があったほうが、患者さんも「ちゃんと通おう」というモチベーションになります。
回数券は、患者さんが継続して通いやすくなる仕組みです。継続して通えば、身体は改善に向かう。だから回数券を提案することは、患者さんの健康を守る行為です。
大事なのは、「何のための回数券か」を患者さんにきちんと伝えること。それができていれば、患者さんはうれしそうな顔で回数券を手に取ってくれます。
「職人」から「経営者」へ

通院指導が自然にできるようになると、もう一つ大きな変化が起きます。自分の役割が「職人」から「経営者」に切り替わることです。
職人マインドは、技術を磨くことが最大の関心で、お金の話は下世話だと感じ、数字を見るのが苦手です。施術の質を上げる原動力ですが、経営の判断には向きません。
経営者マインドは、技術と数字を同時に見て、適正な対価をいただくのが当たり前で、仕組み化に積極的です。切り替わると、見える景色が全く変わります。
「経営者になると、技術が落ちないか」と心配する方もいるかもしれません。僕の経験では、逆です。予約対応で1日1時間使っていた時間が、技術研鑽に使える。会計で月末に深夜まで残業していた時間が、患者さんを観察する時間に使える。
経営者マインドは、職人マインドを捨てることではなく、職人としての時間を確保する手段です。 ここを誤解しないでください。
このブロックは、経験でしか外れません

正直に言います。お金のブロックは、本を読んでも、セミナーに出ても、AIと壁打ちしても、外れません。外れるのは、たった一つの方法だけです。
毎日、目の前の患者さんに通院指導を繰り返す。
通院指導をする。通ってくれる。良くなる。感謝される。「ちゃんと提案してよかった」と自分が納得できる。だから次の患者さんにも自然に言える。売上は、後からついてきます。
「売上が上がる」=「患者さんが良くなる」。この式が自分の身体に染み込んだ瞬間、お金のブロックは静かに外れていきます。
1回の成功では外れません。薄皮が1枚ずつ剥がれます
ここも正直に書いておきます。
マインドブロックは、1回の成功で外れるものではありませんでした。
最初の患者さんが喜んでくれた。回数券を買ってくれた。それでも次の日、次の患者さんの前で、また同じことを思うんです。
- 「今回は断られるかも」
- 「今回は嫌な顔されるかも」
毎回、毎回、ドキドキしながら言い続けました。
でも、患者さんが通ってくれて、実際に身体が良くなっていく。その小さな成功体験を、一つひとつ積み重ねていきました。
そうしているうちに、薄皮が1枚ずつ剥がれるように、マインドブロックが少しずつ外れていったんです。
一気には剥がれません。だから「1回言ってみて怖かったから、自分には向いていない」と結論を出さないでください。1回で外れる人はいません。剥がすのに必要なのは勇気ではなく、回数です。
12年経った今も、ゼロかと言われると分かりません
最後に、格好つけずに書きます。
12年経った今でも、このブロックが完全にゼロになったかと言われると、分かりません。少し残っているかもしれない。新しいメニューの値段を決めるとき、いまでも手が止まります。
でも、患者さんとの信頼の積み重ねが、ブロックを少しずつ溶かしてくれている。そういう実感があります。
完全に消えなくていいんです。言えるようになれば、それで十分です。
そして12年経つと、「断られる要素がほとんどない」状態になります。特別な話術を身につけたからではありません。検査をして、状態を共有して、必要なことを伝える——その順番を守り続けただけです。
自己チェック:いま、どこが欠けていますか

この章の内容を、確認できる形にしておきます。月商50万円に届いていない方は、ほぼ必ずどこかに「いいえ」が並びます。
① 言葉が出ているか

- [ ] 施術の最後に、次回の来院を自分の口から伝えている
- [ ] 「もしよろしければ」「お時間があるときに」を付けずに言い切れている
- [ ] 「セルフケアをやれば大丈夫ですよ」で終わらせていない
② 根拠があるか
- [ ] 初回に検査をして、状態を患者さんと共有している
- [ ] 「どれくらいの頻度で、どれくらいの期間か」をカウンセリングで伝えている
- [ ] その頻度を、自分の言葉で説明できる
③ 仕組みになっているか
- [ ] 問診 → 検査 → カウンセリング → 施術の順番が固定されている
- [ ] 次回の予約を、その日のうちに取っている
- [ ] 回数券を、治療計画とセットで出している
- [ ] 回数券の終わり(8回目など)に、測り直す決まりがある
④ 単価を見ているか
- [ ] 自分の施術料をいつ決めたか、覚えている
- [ ] 前回いくらから変えたか、記録が残っている
- [ ] 「安すぎるかもしれない」と考えたことがある
50万円の壁と、100万円の壁は、別物です
ひとつ補足しておきます。
50万円を超えてから100万円までの間には、また別の壁があります。 そして、そこを越えるのに必要だったものは、マインドではありませんでした。
月商100万円を突破するのに必要だったのは、仕組み化でした。
問診 → 検査 → カウンセリング → 施術。この4つの流れを固定したこと。施術を30分に区切ったこと。週2回の来院を設計として提案できるようにしたこと。これは全部、仕組みの話です。 マインドが変わっただけでは、ここには届きませんでした。
だから、この2つの壁は分けて考えてください。
| 壁 | 正体 | どの章か |
|---|---|---|
| 月商50万円 | お金のマインドブロック | この章 |
| 月商100万円 | 施術の仕組み化 | 第4章 |
仕組み化そのものは第4章で扱います。この章では、その入口として「リピートは施術前に決まっている」という一点だけをお伝えします。
ただ、最初の50万円の壁は、ほとんどの場合「お金のマインドブロック」です。
これを外せるかどうかが、一人治療家としての最初のターニングポイントになると、僕は本気で思っています。
だから、いま50万円に届いていない方は、固定費でも集客でもなく、ここだけを見てください。 技術を磨く必要も、広告を出す必要も、まだありません。
「いいえ」が多かった方へ
落ち込まないでください。開業1年目の僕は、この全部が「いいえ」でした。新患247人を集めておきながら、全部「いいえ」だったんです。
そして、この中で最初に変えるべきは①だけです。②③④は後から追いかけてきます。僕の場合、①を変えた翌月に売上が1.7倍になり、②③は3年目に、④は2年目と3年目に手をつけました。
順番を守ってください。言葉が先、仕組みは後。

今日やること
次に来院される患者さんに、「来週、もう一度見させてください」と、自分の口で言う。それだけです。
言えたら、その方の予約をその日のうちに手帳に入れてもらう。ここまでやってください。
その一言と、その1件の予約が、12年先のあなたのマインドを確実に変えます。